八ヶ岳　赤岳天狗尾根

12.29〜12.30

野田・古屋

実は行ったことの無かった天狗尾根。大体八ヶ岳の東面は昨シーズンの赤岳東稜が初めてで出合小屋に至っては見たことも無いという、山梨の山屋としては論外な私だったが遂に行ってきた。

今シーズンは12月早々から寒気が強く積雪が例年に無く多いことと私の勤務の都合から近場の八ヶ岳へ行くことにしたが、結果から云うと八ヶ岳であってもなかなか大変なラッセルを堪能してしまいました。

12/29　晴れ

この日は朝８時半まで私は仕事だったため、韮崎に10時集合。美しの森に車を置き、11時すぎに歩き出す。天気は快晴、八ヶ岳の東面が穏やかに望まれ、今日が登頂日だったらなあ、と詮無いことを思いつつ歩く。
河原に下りてからは意外と近く、13時10分に出合小屋着。大泉在住という御婦人が2人散策に来ており、今朝は自宅でマイナス9度だったと云っていた。大泉に住んでなくて良かった。
旭東稜と天狗尾根へはトレースあり。天狗尾根に向かって右側の浅い沢状に入り、直ぐに左手の急斜面へ取り付く。笹の植生に雪が積もった鬱陶しい斜面を20分ほど登ると、あまり傾斜の無い尾根上に出る。
そのまま尾根を辿り、15時半、標高2100ｍを超えた辺りの平坦な尾根上にツエルトを張る。
私が22歳の時分から使い続けているゴアテックスのツエルト(骨入り)はまだまだ現役である。やっぱり雪山はツエルトだなあ。少ない酒を飲み山の話などしつつ夜は更ける。ここは未だ樹林帯の中だが、夜半から風の音が強まってきた。

12/30　強風、雪舞う

5時半に起床。風が強く星も見えない。簡単な朝食を済ませ、ツエルトを畳み身支度をしているうちに辺りは薄明るくなってきた。
6時40分出発。しばらく歩くと先行パーティのテントを発見。もう7時だというのに未だテント内で話す声が聞こえる。この先トレースは無く、なんと我々が一番乗りになってしまった。
樹林帯の中のため結構積雪があり、膝上程度のラッセルを続ける。2人のためなかなか大変である。雪は全くの新雪でスカスカであり途中からワカンを履く。
天狗尾根なんてあっという間に登れるだろうと不遜な考えを抱いていたのだが、予想外にはかどらない。
山は完全に雪雲に覆われており、視界が悪く風も強い。雪があまり降らないのが救いだが、日が射さないためとにかく寒い。
2400ｍ辺りで小さな岩場が現れるがこれはロープを出さずに越す。次の岩峰状は右手にフィックスがあったが、どうも悪そうな印象を受けたためロープを出して正面から登ることに。
先ず私のリードで40ｍ、雪の急斜面を左上。途中一見登れそうな岩と草付の凹状に導かれるが、危ない気がしてパス、更に左上。ここは下降の際に上から確認したところ、登らなくて正解というか突っ込んだら大変なことになるところだった。
2P目、更に更に左へ野田さんが40ｍ伸ばす。完全に岩峰の側面へ入った潅木のある急斜面。次は私の番だが、かなり傾斜のある岩場の凹角が10ｍほど、どう見ても途中支点は取れなさそう。少々怖いが仕方が無いので取り付く。
草付にアックスを引っ掛けつつ登るが実にフリーソロ状態のため久しぶりにハアハアしてしまった。そんな思いをして稜上に抜け出ると、しっかりした踏み跡状あり。やはり右手フィックスから巻くのが正解なのだろうか。
その先も正面からは越せない気がして左側面から、次に右側面から巻く。雪が不安定に積もっており、トラバースするのも一苦労である。
12時半、小天狗に到着。相変わらず強風に晒されて寒い。この先稜線を廻ってツルネを下るとなると今回の雪の状態ではキレット付近のラッセルが心配であり、また時間も押しているため、ここから同ルート下降とした。
帰路は後学のために極力リッジ上を辿る。大まかな岩場のクライムダウンを2回、20ｍ程の懸垂下降を2回。
苦労してラッセルした尾根も下れば速い。2時間ほどで幕営地点に戻る。いい加減疲れてきたが暗くなる前に河原歩きを済ませてしまいたいので頑張る。
幕営箇所から出合小屋までは下りは30分程で着いてしまった。あとは河原から林道へと平坦な道をダラダラ辿り、暗くなる寸前の17時頃に美しの森駐車場へ帰着。
久しぶりに全装備を背負って10時間以上の行動となり、良い具合に疲れた。疲れたが予備日を使わず降りてきたので、明日はアイスクライミングに行ける、と喜んで解散。

12/31　晴れ

今日は良い天気。今日が天狗尾根だったら、と詮無いことを考えてしまうが、気を取り直して日向山林道へ。
今年は標高の低い滝も良く凍っている。錦滝でバーティカルを、その上のF2で70度程度の氷を楽しんで下山。
昨日と違い寒くもなく、気楽なアイスクライミングで2005年の登山を締めくくった。野田さん3日間お付き合いいただきありがとうございました。

愛しのツエルト	小天狗

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